「京都って観光中心の街だよね」 → まちがい
「京都って電柱だらけで景観が最悪だよね。京都は観光の街なのに」
たしかに観光の街ではある。
でも、それだけでないことは分かっていてほしい。
京都観光Naviのサイトの最も下にあるフッターに、「広報資料 京都観光振興計画2020」がある。これによると京都の市内総生産の約10%を観光業が占めると推測されているそうだ。数年前は7%あたりだった気がする。
この10%は日本全体の平均値よりもかなり高いものではあるが、京都最大の主要産業というほどではない。産業系ニュースから離れていると分かりづらいが、「京都の企業」とでも検索してみると、意外な企業も京都発なのが分かると思う。
たとえば、京都はハイテク企業が強い。京セラ、オムロン、ローム、村田製作所、島津製作所とか。たとえば、ヒラギノフォントは京都の大日本スクリーン製造が作ってるとか。
個人的にこの問題の根っこは、明治期の東京遷都にあるのだろうと思う。
遷都に際して人口が急激に落ち込んだ京都がとった施策は、産業開発だった。実際、日本ではじめて商業水力発電を開始し、日本初の電車の営業運転も始めた。明治初期の「日本初」に関しても意外なほど京都は多い(たとえば日本初の小学校)。
これをもって京都がすごいとかそういう短絡的な自慢がしたいわけではない。いちおうながら江戸期からあるていどの都市ではあり、その都市が産業開発に必死になり、それなりに成功を収めてきた事実があることを伝えたいだけである。
おまけとして紹介するが、知っている人は知っているだろうけど、京都はパンの世帯購入量が日本一位である。これは、「京都人=あたらしもん好き」という特徴があることの現れだとも言われている。伝統伝統ばかりの街ではないのだ。
だから、景観が悪くても仕方がない、と言いたいわけではない。
観光都市なんてもてはやされて多くの人に来てもらっているが、それでがっかりされてはやはり悲しいところである。改善できるところがあるなら改善すべきだ。
ただ、多くの人間が普通に住んでいて、普通の産業もそれなりにある街だから、方向転換にも時間はかかる。
そこを、「京都は観光しか価値がないのになにやってんだよ」と責められると、なんというか、もにょもにょした気分になる。京都は観光だけちゃうねんで……。
でも、やはり日本の代表的な観光地の一つではあるから、恥ずかしくないような景観になるよう叱咤激励はいただきたく思う。その叱咤激励も京都の産業を知っておいていただいた上での、願わくば愛情をこめたものであるとうれしいものである。
てか、電線だらけとか京都人は気づいてるわー!
特別なところもあるけど、そんなんどこの都道府県にもある特色で、京都人もやっぱりおんなじ日本人なんやで。街が大きくなったら似たような看板も電柱も立つわ。今さら気づいた風な顔で驚かれて、「京都の内側の人間は観光客が来ることに安心してやがる」とか言われると困る……。
でも、ゆっくり変わっていくからな。
バブルが崩壊した後、京都の古い産業とか観光とかめちゃくちゃダメージを受けたんよ。その頃、景観重視で飢え死にするより経済優先ってなって、ビルの高さ制限とかも緩められた経緯があるんよ。
でも、バブル崩壊の影響が薄らいできたあと、激減した観光を復活させようとして、人をいっぱい集めるぜ計画が進んでいったん。やけど、結果、今はめっちゃ来すぎてる状態になってるん。混雑しすぎで面白くなかったとか言われるけど、これは本当に謝るしかないなあ……。
けども、ここから新しい計画として、日帰りの観光客の人が多いから宿泊してもらえるような街にしようっていう計画も進められているんよ。それなりに他の産業もある大きめの街やから、ちょっと時間は掛かるけど、温かい目で見てくれたら幸い。
まだまだ不備が多いけど京都に泊まりに来て、んで、「まだまだやな~」と成長途中の子供を見る目で観察してくれるとうれしい。きっと、それから何年も先に、「おっ、ゆっくりやけど変わってるやん」ってなるはずやから。
なったらいいな。がんばらなな。
というわけで長い文章を読んで下さってありがとうございます。
また京都をよろしくなー!