奥様「私と仕事とラブライブ、どっちをとるの!?」 俺「…………ラ、奥様」
私には結婚を約束しました未来の奥様がいらっしゃるのだが、この方がちょっと私にはもったいなさすぎる素敵な方なのである。これは語り出すときっと「のろけんなボケ死ね殺す」と罵倒されるので語らない。この話の中にも奥様の魅力をついうっかり漏らしてしまうことのないよう細心の注意を払っていきたい未来の奥様超かわいいペロペロ。
で、その奥様にも困ったことがある。私がアニメキャラの女の子を見ていると嫉妬してくれるのだ。自慢か?ああそうさ!
毎期何話もアニメを見る私と違って、奥様はほとんどアニメを見ない。今年はたまたまゲームでプレイしていた『SHOW BY ROCK!!』をちらっと見ていたぐらいだ。ゲームもマンガもほどほどに見るていど。そんな奥様が、深夜の百合アニメを「今回の春香と優のキスはすれ違いの後だからすんごいのおおブフォオ!」と身もだえしつつ鑑賞する私に対して、「面白かったんやね、幸せそうでええね」とニコニコ答えてくれるのだ。てか、文章で書いてみたら聖人だな。怖いのがこれでも軽めのエピソードなんだぜ。
しかしだ、百合シチュに身もだえするのは受入れてくれるのだが、特定のキャラについて「かわいいぜ」というのは禁句にしている。たとえ小泉花陽ちゃんが食べているお米つぶになってそのやわらかなほっぺたにくっつきいつまでも密着していたいにゃーと切望するほど、花陽かっわええッ!となっても言葉にも顔にも出さない。
なぜなら奥様が悲しむからだ。嫉妬はするけど怒らない。二次元には勝てへんもん……とさみしげにつぶやくだけである。そんな奥様が超萌える。奥様のためならチマメ隊の幼女中学生3人が一生懸命に踊る姿を見てもポーカーフェイスを保てる。ときめきポポロンは心の中だけだ。
加えて、今の私はそんなにキャラ萌えにエロ要素を求めなくなったというのもある。たまにけいおんを見ると世間一般の人が想像するぐらいの妄想だが、ベッドの横にいる唯の黒タイツの太ももをむりやり持ち上げて顔を埋めると、困ったような優しい笑顔で頭をなでてくれて、そんな私を後ろから嫉妬したのか怒った顔の憂が責めるように生太ももをむっちりとこっちの足に絡めつつ胸を押し当ててくれる――というごくありきたりなイメージを浮かべるレベルでしかエロい発想はしない。19、行くのー!とか聞いてもイカない。たまにしか。
このエロ願望が落ち着いた理由も明白だ。奥様がいるからだ。奥様なら妄想でペロペロかつリアルでペロペロ二度おいしいのである。しかも奇跡的なことに私の萌えポイントをすべて網羅。代表例、普段メガネなしだが家で私の前だけメガネありの隠れメガネっ子。なんだろう奥様って幻想世界の住人かな。書き進めるたびに夢であるような気がしてくる。夢、じゃない、よね……。うーん、仕方ないから後でリアルでペロペロしてくる。リアルでペロペロしてくる。
で、だいぶ話が逸れたが、ここからが本題である。
奥様に自信を持ってもらいたいのだ。奥様は二次元に勝てないなんて言うけど、余裕で勝利している。
私の中では、三次元の女性が百点満点の世界にいるとするなら、二次元は一万点満点の世界である。次元の壁つよい。これが奥様だと、平均点が不可思議で調子が悪いと那由多あたりである。あずまんがの大阪さんをガンダムデンドロビウムとするなら、奥様は天元突破グレンラガンを小指でひねるレベル。奥様と書いて無敵と読む。怖ろしいことにこのべた惚れ発言をしているのが交際十年超えであることだ。自慢?無論!
でも、本当になかなか伝わらない。
きちんと言葉にしているのかと問われれば、それは――もう想像を絶するほどとしか言えない。どん引きレベルで愛情表現。たぶん、奥様が他のリアル女性と自分を比較して、私が他の女の人を見てた!とか嫉妬することはないだろう。
それでも、なお二次元は強いらしい。
「私は一人だけどキャラはいろいろいる……」
「いつもかわいくて歳を取らない……」
さて、これにどう答えよう。
確かにアニメキャラは季節ごとに次々と現れて、想像もしないような魅力を突きつけてくる。三次元にイカの化身だとか幼女で500歳とかいないしな。
そして、アニメキャラは架空の存在だから歳も取らないし、シワも増えない。トイレもしないしゲロも吐かない。だから麗日お茶子ちゃんが吐くのはゲロじゃないって甘くてきれいな液体なんだって。
うーん、無敵である。次元の壁はやっぱりつよい。
私がきっとどんなことを言っても、奥様が心から納得することはないだろう。
お手上げである。
だから、もう特別に言うことはない。
なので私は、奥様のいつか納得する日までずっと横にいていようと思う。どんなキャラよりも無敵だと分かるように、もう十年もしてきたけれど、まだまだ何十年もずっと飽きずに見ていよう。歳を取ってシワが増えたっていい。ゲロでもなんでもしていいよ。付き合って数カ月も経っていないのに車酔いで吐いた私をイヤな顔ひとつせずに撫で続けてくれたのずっと覚えているから。
何も言えることはないけれど、きっといつか次元の壁だって超えられると思うのだ。ずっと一緒にいれば。
……あれ? 書き始めたときのオチは二次元JC14歳最強!捕まらねえぜイヤッフウウ!ってなる話だったのに。なぜだ。うーん、なんで奥様へのラブレターになってるのだろう。
でも、リアルじゃのろける機会もあんまりないし、誰かも特定されるわけでもないし、気ままに垂れ流しておこう。二十代半ばまでまともに女性と付き合ったことのなかった男にも奇跡は起こるんだから人生捨てたもんじゃないっていう超レアケースが、どこかの誰かのプラスになるかもしれないし。
あ、そうだ、これを奥様にも見せれば二次元美少女への嫉妬が和らぐかもしれない。途中途中、特にけいおんだとかでマズい発言をしたような気もするけども見せてみたら、億が一だけど機嫌が良くなって一緒にアニメの映画デートに行けるかもしれない。ガルパン……はムリそうだから独りで行くとして、響けユーフォニアムの劇場版は許されるかも!
さあ、(死地へ)行ってみよう!